ECM/MD活動により経営指標の何が変わるのか?

2018/09/12

第1回目のコラムでは「ECM/MDで大きなコストダウン効果をねらうには」で、ECM/MD活動によるコストダウン効果について述べました。ECM/MDのコンサルテイングをやっていますと「このECM/MD活動を行うと会社の利益がどのように変わるのですか?」という質問をよく耳にします。
そこで今回は、本来の目的である会社の経営指標とECM/MD活動との関連、また各部門の効果項目と原価の関連費目について解説します。

(1) ECM/MDによる経営指標の効果

<総資本利益率>|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]
総資本利益率


会社の運営にとって大切なことが大きく2つあります。
一つは、売り上げたお金が使われたお金よりも多ければ多いほど利益は出るということです。これは利益を売上高で割った“売上高利益率”を上げる活動で、ECM/MD活動では、開発・設計、生産技術、生産管理、購買での「原価低減」が役割の中心です。
もう一つは、せっかく高い売上高利益率があってもお金を調達してから回収されるまでの期間が長すぎて、お金の流れが遅いと資金が寝てしまうことから、資金の回転を速くすることが必要です。これは売上高を総資本(投下資本)で割った“総資本回転率”を上げる活動になり、ECM/MD活動では、「在庫低減」に効果があります。これら2つの活動によって、会社は投下資金に対して最大限の利益を上げるようとしています。これを“総資本利益率”と呼び、会社が一番大事にしている経営指標です。総資本利益率は、利益を総資本(投下資本)で割ったもので、売上高利益率と総資本回転率を掛けたものです。これらのすべて指標は高い方が良く、つまり、少ないお金で最大限の利益を上げている会社ほど、よい会社ということになります。

(2) 原価低減・在庫低減による決算書への影響

3種類の決算書|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]
3種類の決算書


次に、ECM/MD活動で得られる原価低減・在庫低減による決算書への影響を見てみましょう。「原価低減」により売上原価を低減し純利益を増加し、「在庫低減」により総資本(棚卸資産)を低減し、キャッシュフローによる現預金を増加することができます。 決算書は一定期間(通常の場合1年)ごとに会社の姿を一定の様式で記録し、従業員、株主、債権者などの関係者に会社の経営成績や財政状態を正しく知らせ、稼ぎ出した利益を適正に分配する役目を果たしています。 財務会計上の報告書である決算書には下記3種類があります。詳しい決算書の内容については、専門書へ譲りたいと思います。
① 貸借対照表 :財政状態を表し、経営の安全性を報告する決算書
② 損益計算書 :経営成績を表し、経営の収益性を報告する決算書
③ キャッシュフロー計算書:株主の立場から、企業の客観的なパフォーマンスを報告する決算書
 (大企業のみ)


(3) 目的達成へ向けた各部門の効果項目と関連費目

ECM/MD活動における各部門の効果項目と関連費目|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]
ECM/MD活動における各部門の効果項目と関連費目

ECM/MD活動の効果は、材料費・労務費・製造経費・設備投資の抑制が「原価低減」であり、在庫投資の抑制は「在庫低減」につながっていきます。表のマトリックスは、ECM/MD活動による各部門のコストダウン効果を示しています。表中のコストドライバーとは、各費目の原価の作用因です。  設計開発部門では、製品を構成するムダなユニット・部品種類数を削減すると設計開発工数が削減され、労務費と製造経費の原価低減につながります。また、部品種類数の削減による材料の統一により材料単価の低減による材料費低減と在庫投資が抑えられます。 (表中の○と△の違いは効果金額の大きさを表し、△は若干効果が少ないという意味です) 生産技術部門では、製品を構成するムダなユニット・部品種類数を削減するとライン立上げ時の生産準備工数が削減され、労務費と製造経費の原価低減につながります。また、最適な製造ラインが設計され、それに伴い最適設備、ムダな金型・治工具費の種類が抑えられ設備投資抑制に貢献します。 生産管理・資材管理部門では、技術部門による構造と工程の最適化により、生産管理部門においては段取回数の低減により発注ロットが大きくなり、管理工数の低減で労務費、製造経費の原価低減につながります。また、資材購買部門では、部品種類数の低減により、材料のスケールメリットにより材料単価の低減、また生産管理同様、管理工数の低減で労務費、製造経費の原価低減につながっていきます。さらに、在庫投資も抑制されます。 製造部門では、生産技術の工程の最適化により生産ロットの拡大へつながり、部品1個当たりの段取工数が削減され、生産性向上へ貢献します。
このように、ECM/MD活動を行うことは、多くの部署のコストダウンへ貢献するのです。しかし、むやみやたらにECM/MD活動を行うことは禁物です。そのためには、最初にしっかりとした目標を設定し可能性を見極め進めることが重要です。コストは範囲が広いため、何を良くしたいかを事前検討し、目的に合ったテーマを選定することが大切です。


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