グローバルな需要変動を支えるモジュラーデザイン
2021/01/29
【社会情勢の変化】
COVID-19により世界的なものの手配・生産・供給の考え方に変化が見られます。突然の品薄となったマスクや消毒関連、また世界的な必要性が高まる人工呼吸器や対策機器など、これまで重要とされていた各国・地域ごとのニーズにあった供給から、グローバルレベルでの突然の需要増・需要減への対応の重要性が高まっています。今回のCOVID-19で身近なものが突然なくなり供給が全くされない期間が続くことは、マスクや消毒液を例に考えると、本コラムをお読みの皆様も実感として感じられるのではないでしょうか。 ある滅菌装置メーカーの役員からは、今も続いている世界的な需要増に全く対応できず、供給遅れはもちろん、人海戦術による疲弊や品質トラブルなどにより、売上自体は上がったもののその恩恵は全く無くむしろマイナスであったと嘆いている声を聞いています。大量生産からマスカスタマイゼーションへ、という変革はここ何年も言われていることですが、そこに新たにグローバルレベルでの突発需要変動に対する新たな変革が求められているのではないでしょうか。COVID-19のような事態が何度も起きるとは思いませんが(そう願っていますが)、米中貿易摩擦のような国家間で決まる変化や、紛争や自然災害等の社会情勢の変化によるグローバルレベルでの突然の需要増・需要減は今後の社会で確実に多発していくものだと考えます。
このような事態に対応するため、特に調達・生産拠点をグローバル展開されている企業は、その更なる高度化が求められます。需要把握の精緻化と生産調達との連携を最適化するためS&OP(Sales and Operations Planning)導入や、生産計画と調達手配の最適化のためSCP(Supply Chain Planning)高度化が求められますが、その恩恵を高めグローバルレベルで対応するためには、モジュラーデザインの導入が必須ではないかと考えます。 部品共通化率の向上、最適な半完成品での在庫・拠点戦略、需要の把握と即製品化、需要変更に即対応できるバリエーション戦略がセットとなった変革が重要となります。上記はモジュラーデザインの実現があってこそです。
【モジュラーデザインの役割】
例えば、図2におけるSCPへの役割では、在庫戦略としてCTO(Configure to Order)と呼ばれるように顧客オーダーに対し可能な限り既存部品の組合せで出荷することを目指す必要がありますが、部品・ユニット・製品といったどの段階で在庫化しておくかの判断が重要となります。モジュラーデザインでは製品モデルを作成し、各製品に使用する部品・ユニットのマッピングを分析・整理するので、この分析を基に販売戦略と組合せて検討することで、適切な在庫判断の指標となります。 上記はサプライチェーン高度化に対するモジュラーデザインの貢献の例として、SCPとの関わりを示したものですが、SCP以外に様々な領域に貢献するものであり、その内容は次回以降のコラムでお伝えしたいと思います。COVID-19で企業は疲弊していますが、これを新たな時代対応への教訓と捉え、是非本腰を入れた対応に進んでいただきたいです。
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