機能ブロック図作成の目的

2018/07/21

近年、3次元CADなどのPLMシステムの普及に伴い、設計業務におけるCADオペレーションやデータ登録の工数割合が増えています。また設計手法として、類似形状から流用設計を効率的に行っている企業も増えていまする。
 しかし、部品点数の多い製品では部品間の関係性を3D CADのデータから読み取ることは実際困難です。また配管設計や回路設計を行う際にも製品の機能間のインターフェースがわからないと
個別製品毎に都度、設計が必要となります。そのため、製品の設計において最初に行う作業は製品システムの機能ブロック図を描くことを推奨します。実際に設計者は、頭の中で描いているか、メモ紙に描いているか、既存の図面をもとに修正作業をしているのか、などの違いはあっても目的は製品の機能の働きを描いています。
 機能ブロック図は製品の機能の働きを抽象化/一般化して表すので、思考が方式、機構、構造に引きずられずに発想が広がり、新しい(方式、機構、構造の)アイデアが出やすくなります。したがって、機能ブロック図を下敷きにすることにより必要な機能を抽出したり、新しい機能の追加を考えたりすることができるのです。

機能ブロック図の定義
  製品における機能部品の相互位置、機能間のインターフェースを可視化し、 エネルギー物質信号の流れを示した図であり、標準機能ブロック図とは複数の製品システムの機能を最小公倍数的に含めた図です。



<機能ブロック図>

<機能ブロック図>|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]


機能ブロック図の応用的な活用方法として、以下が挙げられます。
 ①配管系統線図、回路ブロック図作成に活用
 ②標準レイアウト図作成に活用
 ③モデルベース開発におけるモデル作成に活用

① 配管系統線図、回路ブロック図作成
機能ブロック図に部品間で締結される配管や配線を加えることで、配管系統線図や配線系統線図を作成することができます。この情報を基にCAD上で配管、配線設計を行い、実際に必要な配管の長さや配線時のコネクタの数量などを設計します。


<配管系統線図、回路ブロック図の作成>

配管系統線図、回路ブロック図の作成|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]


② 標準レイアウト図作成に活用
レイアウト図とは、製品を構成する機能部品と配管と配線の相対的な位置関係を 示した図の事をいい、標準レイアウト図とは、複数の製品システムまたは部品を最小公倍数的に包含したレイアウト図の事をいいます。 機能ブロック図は、複数の製品システムの機能を最小公倍数的に含めているため、複数機能を跨いだ製品の標準レイアウト図を作る際に利用できます。

③ モデルベース開発におけるモデル作成に活用
近年、自動車業界を中心に、モノづくりに大きな変革をもたらす設計開発手法として、「モデルベース・システムズ・エンジニアリング(MBSE)」が注目されています。 MBSEは構想設計段階で、製品や製造設備における要求事項(Requirement)を基にどういった機能(Function)を組み合わせればよいかを検討しながら、製品の構造や動的な振る舞いなどを論理的手法(Logical)で検討します。この際に機能や構造をモデル化し、構造間の関係性を設計ルール(デザインルール)で関連付けます。 MBSEは対象となるシステムを記述したモデルを仕様として定義し、このモデルをよりどころとして開発プロセスを再構築する手法です。このモデルを作成する際に機能ブロック図を活用できます。




<MBSEにおけるモデル例>

MBSEにおけるモデル例|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]


近年、製品の複雑化や高度化に伴い、以下の課題が挙げられます。
 ・製品の品質問題
 ・ベテラン技術者退職による設計の技術伝承課題
 ・メカ/エレキ/ソフト設計の擦り合わせ複雑化
これらを回避するためには、MBSEのように設計の上流段階である製品企画や構想設計時に、試作回数の削減や設計の手戻りなどの無駄を最小化する必要があります。 ECM/MDでは、モジュラーデザイン手法をベースに製品開発プロセス全体を体系的に管理しながら、設計開発革新を狙っています。
そのために製品の目的である機能に立ち戻り、機能ブロック図の作成を推奨しています。


■モジュラーデザイン研究会メールマガジン
モジュラーデザイン研究会メールマガジンではコラム・セミナー情報などをご紹介して参ります。
また、ご登録いただくと講義・講演資料・お役立ち資料のダウンロードをご利用いただけます。

ECM/MD研究会メルマガ登録はコチラ

 

←(新しい記事) ↑モジュラーデザイン研究会コラム一覧へ (過去記事)→

 

 

このページの上部へ

>