事業継続性問題へのEDM/MD活用について
2018/08/14
ベテラン技術者の退職により企業としてのノウハウが失われる問題が、昨今ますます顕在化しています。団塊世代が大量退職することを懸念した2007年問題・2012年問題は、再雇用等により一時的対応を行った企業も多いですが、再雇用期間も限られており新たな懸念として2020年問題と位置付けられます。
ある中小企業では70歳を超えたベテラン社員数名を「顧問」という形で在籍してもらい、出社日数はおろか出社時間・退社時間も決めず、いつ来ても良いという条件で、但し何か困りごとがあったらその豊富な知見と経験で助けてもらう、という雇用形態をとっています。
このような対応は当面の対応としては効果的ですが、あくまでも暫定対策であり多くの企業が内包している事実だと考えられます。
日本の高度経済成長期を支えた70歳前後の団塊世代と、団塊世代に直接指導を受けた60歳前後の社員は今でも企業の中核でありながら、そのノウハウは若手社員に十分に継承されておらず、2020年を目途に大きな課題となっています。
また、ベテラン技術者が業務の中核を担い最も忙しく現状業務の対応に追われ、若手の育成が十分にできていないことと、優秀な技術者であっても人に教えることは上手くないことが多く、ますます若手が育たない環境にあります。
特に中小企業では人の採用が進まず、にもかかわらず仕事量は増え続けており、このままでは人の問題で事業継続が危うくなる懸念が迫っていると言えます。
ベテラン技術者の退職問題を解決するためには、ベテランの持つ技術ノウハウを「論理的設計手順書」と「設計解説書」という形で体系的に整理し、可視化・資産化することが求められます。
体系的に整理する方法として設計部品構成を定義することが第一歩となります。
設計部品構成は、ある特定の製品群が持つ構成・部品を最小公倍数の要領で網羅的に抽出することで、各構成・部品ごとのノウハウを抜け漏れなく可視化・資産化するとともに、必要なノウハウを効率的に引き出すことが可能となります。
論理的設計手順書には、各部品構成に対する設計手順(フロー)と設計作業・デザインルールを明確化します。設計手順書はあくまでも設計を進めるうえでの情報・ルールのみであり技術ノウハウは含みません。そのため設計解説書が必要となります。
設計解説書にてノウハウを可視化・資産化する際には、5つの要素を記載することが望まれます。
5つとは
①設計内容の概略
②図面や指示図等による視覚的説明
③設計の背景・理由
④標準外の対応
⑤関連する過去不具合とその対策事例
となります。
③の設計の背景・理由が最も重要な箇所であり、例えば、ある形状の肉厚を5~7mmを標準と定めた場合、なぜその肉厚なのか、外れた場合の懸念は何かを具体的に記します。
設計解説書では、過去の資産としてベテランの知見を可視化することが第一ですが、未来の設計思想を構築するため、モジュラーデザインを取り入れ過去の知見と合わせて資産化することで、より効果的な整理が可能となります。モジュラーデザインの具体的な中身については本コラムでは取り上げないため、本研究会の書籍または他コラムをご参照下さい。
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