設計手順アセスメント(形式知化手法の選び方)
2018/10/09
コラム『ECM/MD施策は何から始めるべきか』にて設計手順の整備方法の指針を解説しましたが、今回はもう一歩踏み込んで、設計手順アセスメントを解説します。
ECM/MDに興味をお持ちの方は、設計の形式知化の必要性は感じていると思います。ご存じの通り目的は、設計品質向上、技術伝承、設計LT短縮等が挙げられます。
但し、形式知化しようとしてもMD式設計手順書へ書き出すことが難しいケースも存在します。また、手順書を作成したが使えない、曖昧なままの手順書となってしまう、陳腐化してしまうといったこともあり得ます。それらを防ぐ為にも、手順書の作成に入る前にどの形式知化手法が適しているのかを判断するアセスメントを行うことをお勧めします。
①製品特性アセスメント
製品特性アセスメントは、製品の年表と新技術/新構造搭載の変遷を示し、形式知化対象を判断するものです。
作成の手順は以下の通りです。
1) 過去2世代+将来1世代程度の製品の年表を作成
2) 各製品における新技術/新構造を記入
3) 上記により変化した構造や部品構成の割合を記入
上記にて作成した結果より、保有している製品ラインアップの中でどれを対象に形式知化するかを決めます。判断基準としては、構造の変化割合が少ないもの、将来も継続して開発の予定があるものを選定します。逆の見方をすると、50%以上の構造変更が毎製品あるもの、製品開発の終了が決まっているものは形式知化から除外します。
② 設計フローアセスメント
設計フローアセスメントは、対象製品の設計フローの各プロセスに対して、形式知化手法を選定する為の情報を見える化するものです。
作成手順は以下の通りです。
1) ①で選定した製品の設計フロー概要を書き出す
2) 設計フローの各プロセスに対して、新技術・新構造の影響度の確認
既存の計算書・手順書の有無の確認、トレードオフ有無の確認
設計フローを書き出す際の各プロセスの粒度は、製品のサイズや複雑さにより多様な為、一概には言えません。留意点としては、この設計フローアセスメントを通して、現状の形式知化度合(計算書・手順書の有無の確認)を可視化できる様にすることを意識して粒度を決めて作成します。またトレードオフは、製品やユニットが発生する目的性能(燃費、出力等)と不要性能(熱、音等)の二律背反問題を指します。多くは設計者の頭の中でグルグルと思考した上で、設計解を出している問題です。
③形式知化方法の選定
設計フローアセスメントの結果に基づき下図の判断ロジックに従って、設計フローのプロセス毎に形式知化方法を選定します。
新技術や新構造があるプロセスについては、最初からの形式知化は困難な為、都度設計とします。次に、既存の手順書/計算書がある場合、または記述できる場合は、MD式設計手順書となります。また、トレードオフの項目が3項目以下であり、かつ定量的に設計手順を記述できる場合も、同様にMD式設計手順書となります。ここまでは各社のECM/MD活動の取組等でも自らの推進で進められる範囲と想定しています。
トレードオフ項目が3項目より多く、設計者の頭の中で処理している設計検討業務の形式知化が難しいところですが、理論がある程度存在しているものは、多目的設計探査(詳細は書籍『実践 エンジニアリング・チェーン・マネジメント』参照)となります。まだ理論は確立していない中で、経験値を基に設計している領域については、統計的性能予測を用います。(統計的性能予測については、別コラムにて別途解説の予定です。)これらの手法を用いることによって、MD式設計手順書のフォーマットでは形式知が困難であった内容についても形式知化が可能となります。
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