ECM/MDを構築することにより企業の収益は大幅に向上する
2018/11/12
ECM/MDが企業の収益を向上するとはどういうことか
企業の収益は、お客様に提供する製品やサービスが、お客様から支持され、リピートされ、価値を認めていただけることから生まれます。そのような製品やサービスの品質(Q)や納期(D)を高めながら、原価(C)のムリ・ムラ・ムダを最小化する仕組みがECM/MDなのです。その理由はECM/MDを実践することによる二つの大きな成果物“仕事の仕組み”と“製品構成の考え方”によります。ではECM/MDを実践することによる二つの大きな成果物を見ていきます。
1.仕事の仕組み
ECM/MDを実践することで、システムズエンジニアリングの考え方で整流化された製品開発業務プロセスを構築し高いQCDの製品を提供します。システムズエンジニアリングは大規模なコンピュータシステムや複雑なシステム(宇宙開発、大型の建造物)のように、簡単に試作ができないようなシステムを製作する業務を、多くのメンバーが正確な意思疎通をしながら進めることを目的に、必要な業務プロセスを体系化したものです。(図1)
ここでシステムとは、ある目的を達成するために組織化された機能要素の集合であり、組織化により要素和以上の特性を発揮するものと定義されます。システムズエンジニアリングはこのようなシステムの目的を実現するための工学的方法論及びその一連の活動です。 システム開発のプロセスは、まず求められる要求を明確に定義することが必要です。そして、求められる要求と制約条件から定められたシステムの機能を段階的に分割し、分割された機能間の関係を詳細に検討します。 分割された要素を統合してシステムを作り上げていくプロセスで、それぞれの設計が要求された機能を満足していることをチェックし、最終的には、システムの中に組み込まれた運用状態の試験で検証することが求められます。
この一連の活動を示したのがVモデルです。このプロセスを製品の設計開発プロセスとして体系化する手法群が、ECM/MDの成果物なのです。(図2)
ECM/MDシステムの全体像は「実践 エンジニアリング・チェーン・マネージメント IoTで設計開発革新」日野三十四著 日刊工業新聞社 の図0-12をご参照ください。
システムズエンジニアリングでは以下の活動に重点を置くことで、従来のエンジニアリング活動を補強します。
① 要求の明確化:お客様や・ステークホルダーの期待やニーズを潜在的な要求も含めて引き出し、
工学的な要求として明確化します。これによりお客様との要求の齟齬による手戻りを防ぎます。
② QCDのバランスを確保:客観的な判断基準でQCDをトレードオフすることで
バランスの良いシステムを構築します。また、システム全体を見渡して潜在的問題を早
期に抽出しリスクを減らし、QCDのバランスを崩す要因を未然に防ぐことができます。
③ 技術活動の明確化:全ライフサイクルの技術活動をあらかじめ計画し、繋がりを示すことで
現時点での技術活動が明確になり、全体として整合性のある技術活動が行えます。
④ 経験の活用:得られたベストプラクティスを体系化・フィードバックすることにより先
人の知識・経験・技術を継承できます。さらにベストプラクティスを充実することで
担当する技術者への教育効果が期待できます。また、チェックリストの役割を担うことで
見落としを防止でき、開発の効率も向上します。
これらの手法群を構築していくことは、相応の時間とエネルギーが必要ですが、それにふさわしい成果が得られます。さらに、これらの標準化されたプロセスをITを活用して自動化することにより、お客様の要求に最も適した製品設計がバランスの良いQCDで短時間に実施できるようになります。
2.製品構成の考え方
ECM/MDを構築すると少ない生産設備とモジュール化された少ない部品で多くの製品を品揃えできます。
お客様の要求に応じて、製品の派生機種を生み出していくと、部品の種類が増え、生産設備(金型、冶具等)が際限なく増えていきます。製品を多様化しながら部品種類を少数化し、生産設備も増えないようにすることで、売り上げ増大と原価低減を同時に実現することがモジュラーデザインの大きな役割です。(図3)
そのためには製品システム構成を決めたうえで、バリエーションを考慮して製品のラインアップを決め、設計パラメータと部品諸元の関係を明らかにし、部品をモジュール化する必要があります。
この作業は我が国の最も得意とする、すり合わせ型の問題解決プロセスが生きる領域です。さらには各種の発想法やシミュレーション技術や品質工学等を総動員する知識集約活動です。
ここにこそ本当のエンジニアリング力が求められる領域といえると思います。
身近な事例は丸亀製麺の製品設計に見られます。
ECM/MDを構築することは、高いQCDの製品やサービスを、体系的に設計・製造する知識体系を構築することになります。その理由は、社内の設計ノウハウを標準化し、全員が共有することにより、常に企業の最高水準の製品を安定して提供できる知識体系となるからです。さらに標準化された設計ノウハウをITシステムで実行することにより、短納期で高品質な設計情報を製造に渡すことができます。また、モジュラー化された部品で多様な製品を提供できることで、低コストで多くのお客様の要求に応えて、生産量を増やすことができます。 このようなECM/MDによる効果に加えて、これらの実践を通じて生まれるリソースの余裕を、新たなお客様のニーズや製品開発やイノベーションへと振り向けることが可能になります。またECM/MD構築活動を通じて組織メンバーの知的好奇心を養うことができ、職場が活性化します。これによって国内製造業が抱える、低収益だけではなく、人材不足、低生産性といった3大課題を克服できる有効で実践的な事業戦略と言えます。
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