モジュール化を成功させるポイントはインターフェース

2019/09/05

 今回のコラムは、上流段階の製品仕様レベルよりモジュール数を適用し、ユニット・部品レベルへ展開していくモジュール化の過程の中で、システムへモジュール化を適用する際のユニット・部品同士のインターフェースについて考えてみたいと思います。

(1) 世の中にある6つのモジュール化方式

世の中の部品組立産業から加工産業、サービス産業に至るまでに、モジュール化されたコンポーネントを利用して、カスタム化された最終製品を組み立てていく方法は無数にあります。
 マサチューセッツ工科大学のカール・ウルリッヒ教授による製品のモジュール化に関する研究では、製品やサービスをマス・カスタム化する上での分類において、図1のように6つのモジュール化方式を提唱しています。モジュール化方式は、製品の性質を実際に変えずにバラエティを増やしたいという単純な形態のモジュール化からはじまり、次第に顧客ごとのカスタム化を行い、顧客に提供する製品やサービスの構造を基本から変えてしまうモジュール化へと進んでいきます。この中でも最後の組立モジュール化(例:レゴブロック)は、6つの中で最も強力な武器となりますが、実行するのは難しいとされています。そのキーは部品をつなぐインターフェースであり、コンポーネント共有型モジュール化(例:どのような車種の乗用車でも交換可能なタイヤ)やコンポーネント交換型モジュール化(例:自分の指にあった孔をあけられるボーリングのボール)のインターフェースを利用しながら、より多くの機能をより小さなコンポーネントへモジュール化することが必要であるとしています。  モジュール化の注意点としては、顧客は一連のモジュール化された製品を似すぎているとみなす可能性があるので、製品を設計する際には、顧客が製品やサービスにおいて最もパーソナルだと感じる部分についてバラエティを豊富にすることが必要です。

図1:6つのモジュール化方式|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1.6つのモジュール化方式

出典:「マス・カスタマイゼーション革命」 J・パイン 日本能率協会マネジメントセンター


(2) インターフェースは“相互依存性”をできるだけ小さくする

 モジュールとは、部品・構成要素間の“相互依存性”をできるだけ小さくして、部品・構成要素を少数化する単位のことです。モジュール化により機能的・物理的な組み合わせが容易になると、部品と部品を連結する“インターフェース”部分も簡素化・標準化でき、それぞれ異なる部品を組み合わせた設計が可能となります。 “レゴブロック”がその典型であり、共通化された丸いボッチのインターフェースは、どのようなブロック形状であろうと組み合わせることで、無限の製品形状への対応が可能となります。つまり、インターフェースが簡素化・標準化されたモジュール性の高い製品構成の場合、少ない種類の部品を組み合わせることで、多くの製品バリエーションを生み出しカスタマイズが可能となります。

図2.インターフェースは相互依存性を小さくする|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2. インターフェースは相互依存性を小さくする


 かつて、営業利益1,607億円、営業利益率16%をあげた、トラック・バス・工業用ディーゼルエンジンメーカーであるスウェーデンの“スカニア社”では、「新製品」という概念がそれほど重要ではないとしています。スカニア社では、設計全体を全面的に刷新する「新製品」は望ましくないと考えられていて、新製品に対する技術的改良は、モジュールの単位で製品に適宜反映させるという考え方をとっています。  モジュール化で重要なのは、モジュール同士をつなぐ部分のインターフェースが共通になっていて、技術的な改良を加える場合も、このインターフェースを順守することなのです。このルールが徹底しているからこそ、モジュールごとに独自の進化をとげ、技術的な改良もすぐに製品に対応することができるのです。  モジュラーデザインの技術を使い、ユニット・部品の仕様へモジュール数を適用し、インターフェースの相互依存性を小さくすることが、モジュール化にとって必要条件になります。相互依存性を小さくしインターフェースの標準化を進めることが製品アーキテクチャの標準化へ繋がり、さらには業界へ広めることによって、競争と共創の共存と持続可能な社会へと導いていくことを確信しています。

参考文献
「マス・カスタマイゼーション革命」 J・パイン 日本能率協会マネジメントセンター
「モジュール化」 安藤晴彦・青木昌彦 編著 東洋経済新報社


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