製品モデルの作り方
2019/12/27
2019/10/28(月)に開催しました第7回定期講演会でも当研究会の講演の一部として発表いたしました製品モデルについて、今回のコラムではボールペンを使った事例でご説明します。 はじめに製品モデルの定義について説明します。製品モデルは図1に示すとおり、1つの機能製品でその方式、機構、構造を超えてすべての仕様を顧客、製品企画、システム設計、部品設計、生産設計の各視点から最小公倍数的に整理・標準化し、上位仕様から下位仕様へ展開したものです。端的に言うと、顧客要求仕様や商品企画の仕様と製品/ユニット/部品との関係性を可視化したものです。
この仕様と部品の関係性は、熟練設計者の頭の中で当たり前に考えていることを可視化し、若手設計者や外部のパートナーとの意思疎通を促進させます。ボールペンの設計を例に考えてみます。例えば「もっと滑らかに書けるボールペン」を新製品として開発するとします。まずはこの「滑らかさ」という定性的な表現を定量的な社内仕様に落とし込む必要があります。例えば紙面との抵抗値やボールの転がりやすさ(転がり摩擦係数)といった社内で検証、解析できる仕様値に変換します。変換された社内仕様は具体的な製品/ユニット/部品との関連性をマトリックス定義します。具体的には紙面との抵抗値が影響する部品として、ボールペン先端のボールやボールを支えるチップ構造、インク成分などが影響することが考えられます。マトリクスには仕様-仕様間、または仕様-部品間で関連があるセルに〇を付けます。マトリクス作成時の注意点は、あくまで関連があることを示す〇だけを付けることであり、詳細な関連式はこの製品モデルでは表現しません。ボールペン先端のボールは径や材質、重量など複数の仕様と紙面抵抗が関連づきますが、それらをすべて製品モデルに表現すること、膨大な行のExcelファイルをまとめることになり、表が見づらくなります。それよりも部品との関連性を抜け漏れなく(MECEに)整理することが非常に重要になります。
では、部品の最終仕様(ボール径や材質)はどこで決めるのかというと、モジュラーデザイン手法では設計手順書の中で仕様を論理的に決定します。設計手順書は設計部品構成で管理し、設計の難易度に応じて製品/ユニット/部品単位で設計手順書を作成します。この際に抜け漏く可視化された製品モデルが作成されていると、各設計手順書作成時には、上位からくる要求仕様をすべて満たす論理的設計手順書を作成することができます。 製品モデルは、営業や企画部門と設計/生技間の意思疎通を促進するための極めて重要なツールであり、昨今のベテラン技術者の大量退職による事業継続性の問題やものづくりの品質問題に対処するための一つのツールであることがわかります。当研究会では、引き続きモジュラーデザインの手法をより分かり易く普及させるためのコラム配信やセミナー開催を行ってまいります。
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