エンジニアリング・チェーン・マネージメント(ECM)を実現するための管理ツール
2024/6/30
エンジニアリング・チェーン・マネジメント(以下、ECM)の全体像は「実践エンジニアリング・チェーン・マネジメント IoTで設計開発革新 日野 三十四 著」のP33に記載されており、本研究会のコラムや定期講演会の中でもたびたび紹介しています。ECM全体像は1~7章で大別されており、各章の概要をおさらいします。(DB=データベース)
- 第1章 設計根拠情報DB
マーケティング情報DBと設計基準DBの2つで構成され、設計の根拠情報を管理 - 第2章 設計開発知識ベース
商品企画及び見積依頼の情報を元に、製品全体仕様やレイアウト仕様へと付加価値をつけながら変換して、最終的に部品レベルの諸元情報に変換する設計開発の知識群を管理 - 第3章 製品仕様DB
製品開発における要求仕様及び設計仕様を管理 - 第4章 設計検証システム
設計システムで設計した仕様に基づき品質を検証する方法の体系群 - 第5章 原価管理システム
製品企画段階から原価計画と量産開始から廃棄までの原価維持の体系群 - 第6章 設計文書編集システム
設計仕様情報を所定の文書や図面の形に自動的に編集して出力するシステム - 第7章 ECM連携SCM
ECMのBOMからSCMのBOMへ情報をシームレスに受け渡すシステム
日野 三十四氏と共同執筆時は、上記のECM全体をカバーできる既成のシステムはなく(当時は知らず)、個別のECM/MD方法論はExcelベースでのテンプレートで実践していたが、それらを体系的に管理するためのシステムの調査や構築が課題でした。ECM/MDの各方法論の一般的な管理手法や管理ツールについて示します。(図1)
以下は管理手法や管理ツールの一般例となります。
- ①マーケティング情報DBはCRM(顧客関係管理)システムで管理されます。
また業界規格などはシステム化されたツールを導入し、ルールやプロセスをシステムで支援します。 - ②設計基準DBは社内規定として整備され、技術ドキュメントとして
社内ポータルなどで全社に共有します。 - ③設計開発知識ベースは設計ナビシステムといった設計基準に沿ったプロセスを
支援するシステムや体系化された技術ドキュメントを作成し、部や課内に共有します。 - ④製品仕様DBはコンフィグレーションで要求仕様および設計仕様の関連づけを管理します。
- ⑤設計検証システムは品質検証システムやDRBFMで製品システムの品質を管理します。
- ⑥原価管理システムはERPや個別の原価管理システムや管理ツールで
製品および製造の原価を管理します。 - ⑦設計文書編集システムはPDMに技術ドキュメントやCAD/図面を管理します。
またCADを使わない企業ではファイル管理システムで技術ドキュメントを管理します。
上記はあくまで一般例ではあるが、それぞれのECM方法論において、管理する仕組みが異なることが一般です。そのため、いざ情報を繋げようとしても繋がらない、またはデータを繋げるのに人力で編集しなければいけない。はたまたデータを探すところから時間が掛かってしまうことが散見されます。またサイロ化されたシステムが複数あることで、管理や教育の工数も必要となります。そこで、ECM/MDをOne Stopで実現するための最適な管理ツールの例を紹介します。(図2)
ここで紹介するのは、Modular Management社のPALMAという製品です。PALMAは1つのシステムで上流の顧客情報や要求情報を管理し、製品のアーキテクチャや製品・製造仕様に展開して管理できます。また製品ごとの収益性まで管理することができ、製品ライフサイクル全体を管理しながら、コンフィグレーションを効率的に管理できます。1つのシステム上でECM/MDに関わる情報を一元管理することで、データをシームレスに繋げることはもちろんのこと、同一のプラットフォーム上で作業することで、教育や管理工数も低減できます。
研究会の長年の課題として、ECM/MD手法自体がどんなに良い方法論であっても、Excelではすぐに陳腐化しますし、データを繋げるためにもかなりの苦労がありました。そこで、PALMAのようなECM/MD全体像を1つにシステムでOne Stopで管理できるツールがあれば、ECM/MDがより飛躍できると確信しています。今後、当研究会では、ECM/MDの各方法論をPALMAでどのように実践できるかを検証し、コラムや講演会で発表できるよう研究して参ります。
参考
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