部品標準化と部品共通化の違い
2019/03/11
モジュラーデザインを取り組むことによる大きな効果の1つとして、部品標準化・共通化が進むことで、設計工数削減や新規部品の削減に伴う不具合低減、生産効率化、調達コスト削減、各種管理コスト削減があげられます。ここでいう部品標準化・共通化とは、部品少数化(種類数を削減)を分類したもののことを指しています。部品少数化の分類を図1に示します。
部品標準化
モジュラーデザインでは、一括企画とも呼ばれるように、市場分析・競合分析・技術ロードマップ・VOC分析等といった活動により未来を見据えた製品ラインアップ検討を理論的に分析します(本コラムでは割愛しますが、この本来の製品開発で実施すべき理論的分析にモジュラーデザイン成功の鍵があるともいえます)。モジュラーデザインによる部品標準化は理論的分析によって実現されます。製品ラインアップ検討において製品のサイズや能力といった設計仕様にモジュール数を適用することで、類似する製品シリーズを超えて部品が少数化します。新製品の企画段階から製品ラインアップをきちんと整備するため、部品標準化の適用率や範囲も広く高い効果が望める反面、準備や分析に時間を要します。図2では、顧客要求仕様や製品仕様を元に製品のラインアップを標準化し、個別の製品を設計する際は、製品システム構成や設計部品表を介して設計仕様を決定する流れを示しています。
部品共通化
一方、部品共通化は既存製品を横並びで検討するところから始まります。部品や部位を軸に過去の類似製品群を比較し、共通化の可否を検討します(図3)。この際、形状が似ているからといった表面的な理由だけで共通化すると、実際の設計では様々な制約により共通化が不可能であったり、実は最もコスト(調達コストのみでなく製造や管理コスト含めたトータルコスト)が高いものであったりと共通化が進まない要因となります。部品を設計するうえでの設計根拠や設計手順を洗い出し、共通化が可能かしっかりした検討が必要です。
最後に、モジュラーデザインによる部品標準化と部品共通化は、どちらが正しいというものではなく、製品や事業の特性に合わせてより効果的な手段をとるべきです。選択する1つの視点としては、製品サイクル、技術・市場の新規性、社内事業戦略の充足度等があげられます。技術・市場の新規性を例にとると、技術的に衰退期であり市場分析や競合分析による未来の製品ラインアップに変化が少ないと想定される場合は部品共通化が効果的、といったものです。本コラムでは詳細に言及しませんが、詳しく知りたい方は、書籍「実践モジュラーデザイン(改訂版)」の製品モデルの確立の章などをお読み頂けると幸いです。
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