モジュラーデザインの成果を見える化する3つの指標

2019/03/27

 第5回目のコラムでは「ECM/MD活動により経営指標の何が変わるのか」で、ECM/MD活動による経営指標や設計・生産技術・購買・生産管理部門への効果について述べました。今回は、ECM/MD活動においてモジュラーデザインの成果を見える化する「MD指数」「PMD数」「部品指数」の3つの指標を紹介します。

(1) 設計と生産の両立を見える化する「MD指数」と「PMD指数」

 モジュラーデザインを推進するにあたり、あるべき姿を目指し進めていきたいものです。そこで、開発設計部門と生産技術・製造部門のモジュラーデザインを見える化する管理指標として、MD(Modular Design)指数とPMD(Product Modular Design)指数があります。  MD指数とは「総部品種類数÷機種数」で表し、1機種あたりの部品の共通化の度合いを示し、低い方が設計効率は良く開発設計部門の管理指標となります。また、PMD指数とは「年間総生産数÷機種数」で表し、1機種あたりの生産数の度合いを示し、高い方が生産効率は良く生産技術・製造部門の管理指標となります。
 図表1は、ある事業部で生産しているA・B・C・D 4つの製品群について、MD指数を縦軸、PMD指数を横軸にとったものです。A群は、1機種あたりの部品種類が多くMD指数が高く、さらに1機種あたりの生産数が少なくPMD指数が低いため、“設計と生産”泣かせの製品群であることがわかります。逆にD群はMD指数が低くPMD指数が高いため、理想的な製品群と言えます。このように、MD指数とPMD指数により製品群の設計と生産の両面からの見える化が可能となり、あるべき製品群の方向性を表すことができます。

MD指数とPMD指数|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1:MD指数とPMD指数


(2) MD指数で製品群の価値向上を3つのパターンから考える

価値向上の3つのパターン|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2:価値向上の3つのパターン


 図2はモジュラーデザインによる、製品群の価値向上の方向性を示しています。ここでの価値向上とはMD指数が小さくなることを指しています。縦軸に製品群に対するラインアップの機種数(P)、横軸にこれらを構成する部品種類数(V)をとっています(構成部品の種類数は右が少なく左が多い)。今、現状の製品群のラインアップが青丸の位置にあるとすると、製品群の価値向上の方法には①から③の3通りのパターンがあります。 ①は現状の機種数(P)は維持しながら、部品構成のモジュール化により部品種類数(V)の削減を行います。②は機種数(P)を増加しつつ、さらに部品構成のモジュール化を検討し部品種類(V)の削減を行う最も価値の高い理想的なパターンです。③は機種数(P) を増加し部品種類数(V)を維持するパターンです。
 モジュラーデザインの活動を進めていくなかで、最初に顧客ニーズであるアウトプットのラインアップの機種数を明確にし、次にそれを構成する部品構成を検討し、3つのどの方向性で進めるかを決定することは重要です。モジュラーデザインの活動のお手伝いをしているなかでは、顧客ニーズの多様化に伴い③のパターンを目指されている会社が多いようです。③のパターンは、部品種類数(V)は一定になっていますが、これは現状の部品構成をそのまま使用するという意味ではなく、モジュール数(標準数)を活用し理にかなった部品構成の再構築をした結果、部品種類数(V)は改善前とほぼ変化していないという意味です。

(3) 部品構成を見える化する「部品指数」

 モジュラーデザインの見える化をする指標として3つめに部品指数があります。部品指数は、部品構成の「総部品数×総部品種類数」で求めます。改善前と改善後の部品指数を比較することにより製造原価に対するおおよその効果を推定することができます。
 図3の表は搬送ユニットの部品構成を示しています。搬送ユニットは“1000”から“7000”シリーズの5機種に対応していて、5種類の品名、13種類の品番で構成されています。“送り軸”は、4種類の品番を持ち5機種に対応しています。“カバー”は、5機種すべてに共通で品番は1種類のみで、それぞれの部品の種類は、「部品種類数計」に記されています。
 また5機種に対する部品構成は、それぞれの機種名を縦にみた数字が部品数となっています。たとえば、送り軸は“S356-11021”が1個、ベアリング抑え“E105-10023”が2個使用されていることを示しています。それぞれの部品数は「部品構成数計」に記されています。
 表の右下に、総部品点数の合計35(7+7+7+7+7)と総部品種類数の合計13(4+2+1+3+3)を記しています。したがって部品指数は、35(総部品点数)×13(総部品種類数)=455 となります。
 一般に、部品指数が改善後と改善前に対し50%減になると、工場のあらゆる生産性に大きな成果が表れると言われています。つまり50%(≒0.7×0.7)減にするには、改善の目標値を総部品点数と総部品種類数をそれぞれ30%減ずることになります。
 これらを実現するには、部品点数削減にはVE(Value Engineering)を、部品種類数削減はモジュラーデザインを活用するすることが必要です。

図3:部品指数|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図3:部品指数


 今回は、「モジュラーデザインの成果を見える化する3つの指標」について述べました。ECM/MD活動において、目標設定を明確にして進めていくことが大切なことは言うまでもありません。これら3つの指標をベースにモジュラーデザインの成果を見える化し、価値あるECM/MD活動のツールとして活用していただきたいと思います。



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