マスカスタマイゼーション事例とモジュラーデザイン

2019/04/24

マスカスタマイゼーションのニーズの高まり

マスカスタマイゼーションの概念は2000年前後に提唱されたものですが、インダストリー4.0登場後、さらに注目されています。また、市場においてB2C/B2B製品に関わらず、顧客は、適切な値段でありながら自分に最適な商品を望んでいます。 マスカスタマイゼーションは、大量生産(マスプロダクション)とカスタマイズを掛け合わせた言葉であり、その言葉通り、顧客のニーズに合わせたカスタマイズを大量生産並みのコストで実現するものです。これを実現させるためにはモジュラーデザインを活用し、コスト低減とカスタマイズという二律背反する課題を解決することが必須となります。 昨今、デジタルファブリケーションやITの進化も伴い、マスカスタマイゼーションの事例が増えてきており、その動向とモジュラーデザインの必要性について述べます。 最近のマスカスタマイゼーションは、以下の事例より3つの潮流があると言えます。

事例

1:3Dプリンターの活用

MINIでは、ダッシュボードや外装のパネルに好きなデザインを描き
3Dプリンターで生産するオプションサービスがあります。

MD指数とPMD指数|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

出典:MINI(https://yours-customised.mini/


2:コンフィギュレーションの進化

NIKEのカスタマイズスニーカーは、ベースのスニーカーに対して
各部位の生地・色が選択可能となっています。

価値向上の3つのパターン|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

出典:NIKE(https://www.nike.com/jp/ja_jp/c/nikeid

生地の種類を豊富に用意することにより、組合せ数は数万通りになります。生地投入と型紙に則った切断加工を自動化させることで対応可能になったと想定されます。


3:オーダーメイドの進化

ZOZOのプライベートブランド服では、ZOZOスーツ(水玉全身タイツ)による身体測定データを
用いて、自身のサイズに適した洋服(Tシャツ、ジーンズ等)が作成可能となっています。

図3:部品指数|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

出典:ZOZO(http://zozo.jp/pb/

デザイン面での選択肢は少ないですが、サイズが1cm単位で調整可能です。これは、NIKEのスニーカーの切断加工を進化させ、ユーザーデータに則った切断加工を実現していると想定されます。旧来では職人のテーラーが対応していた内容をテクノロジーによって可能となった事例です。 設計の観点から上記の3事例に共通して言えることは、部品間のインターフェースを予め決めていることです。MINI、NIKEの事例では、標準品と同じ部品間のインターフェースですが、ZOZOの事例を実現するには、インターフェースに特定のルールを予め設けることにより様々なサイズに対応しています。現時点では1製品内でのカスタマイズの拡充ですが、今後は製品間を跨ったカスタマイズの拡充へと発展するでしょう。そこで重要となるのが、製品を横断した部品構成の標準化・共通化・流用化であり、その鍵となるのが設計のやり方であるモジュラーデザインです。

モジュラーデザインの必要性

現在マスカスタマイゼーションの事例は特にアパレル製品で増えています。この理由として、1つ目は、固定費のかかる金型を必要とする部品が少なく、多品種の生地とその切断・縫製の加工により製造できること。2つ目は、ユーザーのオーダーと生産工程をシームレスに繋いでいること、と考えられます。 今後、ハードウエア製品でのカスタマイズのニーズ、及び事例が増えることは確実ですが、顧客のニーズから、製品ラインアップ、設計仕様まで体系的に整備されていなければ、部品種類数が無限に増えてしまい設計現場や製造現場は対応仕切れません。
日経ものづくり1月号(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/nmc/18/00040/)のアンケート結果では、マスカスタマイゼーションに必要となる設計上の技術トップ3として、『生産性を考慮した設計』、『設計標準化』、『モジュラーデザイン』が挙げられていました。このトップ3は、いずれもECM/MD研究会が提唱する“モジュラーデザイン”に含まれているものです。マスカスタマイゼーションに向けたモジュラーデザインの活用法については、次回「マスカスタマイゼーションに向けたモジュラーデザイン活用法」で紹介します。





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