標準化とモジュラーデザイン
2020/8/31
開発設計領域における標準化とモジュラーデザインとの違いの解説、及び今後重要となるサーキュラーエコノミーとの関わりについて解説します。
■標準化の定義
まず、JIS Z 8002における標準化の定義としては以下です。 「実在の問題または起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通に、かつ、繰り返して使用するための記述事項を確立する活動。」研究会では標準とは以下のように定義しています。
- 最高の組織的知識
- 高跳びバーのように先人が跳んだ最高の高さ(仕事のやり方)=後輩が跳び越えるべき基準
- 跳び越えたらバーを上げるもの(標準は改定されるもの)
つまり、標準は社員の挑戦と創造を引き出す源泉と言えます。この標準を確立する活動が標準化です。
◼︎3つの標準化
設計領域での標準化というと、部品標準化、設計標準化が挙げられます。また、設計標準化とモジュラーデザインは近い関係にありますので、その違いを比較します。まず、ここでは3つの標準化を以下の通りとします。- 部品標準化:現在社内で使われている部品の中に標準部品を設定し、部品種類数を減らす活動
- 設計標準化:設計プロセス・手順を形式知化・標準化し
同時にレイアウト、ユニット、部品等も標準化する活動 - モジュラーデザイン:製品多様化と部品種類少数化を両立する設計の方法
標準化を対象部品と効果の2軸で見ると下図の違いがあります。
3つの標準化の違いをより詳細に、7項目(活動スタイル、対象部品、効果、アプローチ法、共通化の可能性、成果物、活動期間)を比較すると以下表のようになります。
3つの活動を比較するとモジュラーデザインが最も優れていると見えますが、留意点として以下3点があげられます。
- 1:モジュラーデザイン適用には開発設計部門を超えた全社横断の取り組みが必要となり
関係者の合意や活動期間がボトルネックとなり得る。 - 2:モジュラーデザイン開始前には、MD可能性分析を行い、想定効果を見積もる。
- 3:回路を持つ製品の場合、部品標準化の中でも電子部品の標準化では
調達と連携することにより大きな効果創出が見込める場合がある。
◼︎業界内横断のモジュラーデザイン
このモジュラーデザインの取り組みを自社内だけでなく、業界横断的に取り組みを拡大することによってサーキュラーエコノミーへの貢献を拡大できると研究会では考えています。サーキュラーエコノミーでは、「再利用」「再販売」「素材再生」「資源循環」の4つの循環を目的としています。これらを実現する為に、“資源を好循環させるしくみ”と、“しくみの循環を考慮した製品設計”が求められています。 特に“しくみの循環を考慮した製品設計”に向けてモジュラーデザインを適用することによって、製品ラインアップからユニット、部品と階層別のモジュール化を行うことが有用です。最後にサーキュラーエコノミー製品の事例として、オランダのFairphone(フェアフォン)を紹介します。こちらは分解性、リサイクル性に優れた製品であり、モジュラー化されていることで、故障しても必要な部分のみを交換して使い続けられるようになっています。
参考
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