製品仕様データベースの必要性
2020/10/27
製品仕様をすべて管理しているPLMパッケージはこの世の中には存在していません。ご存じの通りPLM(Product Lifecycle Management)とは、製品のライフサイクル(商品企画・開発から保守・廃棄まで)の情報を管理する仕組みや手法のことですが、その実態は、技術・開発部門が利用するBOM(部品表管理システム)や、設計図面や技術文書を管理するPDM(Product Data Management)が主な使用目的になります。「実践 エンジニアリング・チェーン・マネジメント」では、BOS(Bill Of Specifications)、いわゆる製品仕様データベースがECM全体を管理する中心的なシステムであり、設計手順書などの設計開発知識ベースと仕様データを自動授受し、設計開発プロセスの自動化をつかさどる基盤になります。本コラムでは製品仕様データベースの必要性について説明します。
個別製品の仕様は大きく二つあり、一つは見込量販型製品における商品企画書や個別受注型製品における顧客からの見積依頼書といった要求仕様であるBOS(R)があります。もう一つは図1のような要求仕様を受けて設計した結果を登録するBOS(D)があります。製品仕様データベースが無い会社では、要求仕様は企画書や見積依頼書といったドキュメントとして管理・登録されていることが大半です。設計仕様はCADモデルや図面、設計仕様書にそれぞれ記載されていることが大半です。近年のPLMでは登録されているドキュメントの中身のテキストデータを全文検索し、該当文字が含まれているドキュメントを一括検索できる仕組みも存在しています。しかし、仕様から対象となるドキュメントを探すことは出来ても、設計で生み出される数千~数万の設計仕様を管理、活用することは困難です。設計仕様は、設計結果を表すすべての諸元が該当し、外形寸法や材質、性能といった製品の主要な仕様だけでなく、形状の細かい寸法や角度などもすべて設計仕様に含まれます。
そこで製品設計の段階から製品仕様を管理するためのデータベースづくりが必要になります。そして、BOSはPLMやERP(Enterprise Resources Planning)、SCM(Supply Chain Management)、ALM(Application Lifecycle Management)といった、業務システムと連携することで、より大きな効果を上げることが期待できます。さらにはIndustry 4.0やIoTの流れを受け、生産現場やサービス(顧客の使用環境)、ビッグデータ解析やAIなどの革新技術との連携が期待されています。そして製品ライフサイクルの各所において、現場からのフィードバックを元に、製品仕様との紐づけすることが重要になります。
では、設計で生み出される数万の仕様をすべて管理する必要があるか。これは現実的には難しいと考えます。これは製品毎に仕様が異なるため、新たな製品開発を行うごとに製品仕様を追加・管理しなければいけないからです。では、どの粒度の仕様情報を管理すればよいのか。以下に管理すべき推奨項目を列挙します。(ここでは部品は製品の一部として解釈するものとする)
- ビジネス情報(案件情報、顧客情報、社内情報など)
- 製品要求仕様(企画書、見積依頼書など)
- 製品性能仕様(製品の規格や能力、特性、サイズなど)
- 製品のインターフェース仕様(取付規格やサイズなど)
- 設計条件(環境条件、出荷市場、生産場所など)
BOSはECMの全体を管理する中心的なシステムであり、設計手順書やモジュールテーブルといった設計開発知識ベースと仕様データを自動授受し、設計開発プロセスの自動化をつかさどる基盤になります。またBOSに蓄積されたデータを所定の形態の文書や図面の形に自動的に編集ができたり、蓄積したデータをマーケティング情報データに引き渡すことで、新たな新技術や新製品開発や営業戦略に繋げることができます。 製品仕様データベース(BOS)の詳しい説明は、以下の書籍(MD教本)にて詳しく解説しておりますので、是非ご確認ください。
製品仕様データベースの詳細解説掲載ページ
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