日野三十四氏のコラムを振り返り、モジュラーデザインの推進ポイントを考える

2025/6/30

モジュラーデザイン(以下、MD)の必要性は皆さん感じているが、いざ実行するとなると中々手が動かない。経営層含めた上層部に取り組みを説明しても中々理解してもらえない。こういった悩みを持たれている方は多いのではないでしょうか。今回は、MDの第一人者であった当研究会の名誉会長である、故 日野三十四氏(以下、日野先生)の人気コラムで振り返り、MDに対しての熱い思いを改めて考えてみます。(下記URLからリンクされたコラムは日経クロステックの無料会員に登録すると全記事がご覧いただけます。本コラム以外にも有益な情報が多数掲載されているため、是非ご覧ください)

参考サイト情報|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

  コラムの内容や当研究会のHPに記載している略歴を基に、図1に日野三十四氏の経歴と著書・受賞歴、コンサル実績を示します。

図1:日野三十四氏の経歴と著作・受賞歴、コンサル実績|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1:日野三十四氏の経歴と著作・受賞歴、コンサル実績


 私が一読して考えるコラムの見どころは以下の3点となります。

  1. 1:日野先生が東洋工業(現マツダ)に入社し、ロータリーエンジンの研究開発/実験に従事し、課長として成果を上げるプロセスと巨額リコール等大きな挫折を経験し、倍返しを誓う前半部(第1回~第5回)
    ※MDに直結しないが、エンジニアの悩みや経験談を理解する上で参考になります

  2. 2:技術管理部門に異動し、トヨタのベンチマークを実践して標準化やマネジメントの重要性を理解して体系化していく中盤部(第6回~第13回)
    ※自動車の標準化活動×マネジメントを組み合わせたMDの基礎が誕生します

  3. 3:経営コンサルタントとして独立後に「トヨタ経営システムの研究 永続的成長の原理」を出版し、名声を上げて韓国の超大手電子メーカでMDコンサルティングを実践する後半部(第14回~第20回)
    ※トヨタ研究の成果を纏め、コンサルティングの実践を経て集大成となる「実践モジュラーデザイン」本が出版されます


 数年ぶりにコラムを読み返して感じたポイントや気づきを列挙していきます。

  • ・大手メーカでも部品の共通化、標準化の定着には一苦労。複数社間での標準化は更に困難
    ⇒部品の共通化、標準化はボトムアップでは難しく、トップダウンでのアプローチとやりきる信念が必要になります。

  • ・物事や考え方を定量的且つ形式知化することがMD推進の第一歩
    ⇒特に聖域化しやすい設計開発領域は暗黙知を端的且つ定量的に形式知化することが求められます。

  • ・設計手順書は作って終わりではダメ。完成後も定期的にメンテナンスする仕組みづくりが必要
    ⇒製品の多様化に伴い、設計も常に進化や変化が求められており、一度作った設計手順書を更新やメンテナンスする仕組みづくりや運用が重要になります

  • ・海外の設計者は設計知見が深いだけでなく、マネジメント手法も学習している
    ⇒MDの必要性を理解するために、TRIZやタグチメソッド、TPSといった管理技術の概要や基礎知識が必要になります

  • ・半信半疑でもコンサルの言うことを信じてやりきることで、コンサルも必死になり好循環が生まれる
    ⇒MDは即効薬ではないので、部分的な効果の刈り取りと長期的な効果や狙いの両面での推進が必要になります

  • ・MDは一人では実践できず、自部門のメンバだけでなく関連部門との協力体制が必要
    ⇒ECM全体の改革だけでなく、さらにはSCMの関連部門との協力体制の構築が不可欠です。

最後に
 日野先生が2017年6月に亡くなられてから8年が経過しました。日野先生が遺してくれたモジュラーデザインやエンジニアリング・チェーン・マネジメントの体系は、当研究会で引き継ぎ、進化や深化の研究を進めております。本コラムや日経クロステックの記事を見て、少しでも当研究会の取り組み興味を持ってもらえると幸いです。
 本日のコラムで紹介した具体的な内容や手順、方法論は、2025年4月11日に増刷された
「エンジニアリング・チェーン・マネジメント(第8刷)」(6月に電子書籍も発行)にも記載されていますので、是非ご覧ください。

「エンジニアリング・チェーン・マネジメント(第8刷)」(6月に電子書籍も発行)|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

「エンジニアリング・チェーン・マネジメント(第8刷)」(6月に電子書籍も発行)


当研究会では、引き続きモジュラーデザインの手法や考え方をより分かり易く普及させるためのコラム配信やセミナー開催を行ってまいります。


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