機能系統図と機能ブロック図

2021/05/30

 当研究会のコラムにおいて機能ブロック図関連コラムの閲覧数が多く、“機能”から考える設計の関心が高まっていることがわかります。その背景としては、現在の大半を占める流用設計が引き起こした品質問題等の弊害によって、そもそもの基本に立ち返った設計や、0から機能を見直すことで設計の刷新を図っている企業が多くあることが想定されます。本コラムでは、機能ブロック図と混同されやすい機能系統図との違いについて記載します。

■機能の定義

まず初めに、機能の定義は、物事の働きを示す言葉であり、名詞+動詞(○○を○○する)で表現できます。物事の原理原則に立ち返ると基本機能は1つとなり、その基本機能を目的として、目的と手段の階層構造として表せます。

■機能系統図

機能系統図の定義は、対象となるシステムに要求されている働き、目的を明らかにするために、その構成要素や要求事項などから抽出した機能を、目的-手段の関係で整理した図です。 目的は、そもそもの製品の機能に立ち返り開発する為のものです。機能系統図では、方式や構造などの手段は考えずに、上位の機能から階層的にゼロベースで検討するときに用います。 図1に機能系統図の工作機械の例を示します。最上位の目的に「ワークを切削する」を置き、それを目的-手段の関係性で1次→2次→3次と分解します。その分解する過程で、どのように上位目的を達成するか(How)を考えることにより、革新的な手段をゼロベースで検討します。

図1:機能系統図の例|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1:機能系統図の例



参考情報となりますが、この機能系統図はバリューエンジニアリング(VE)にて用いられる手法です。VEでは、機能をゼロベースで考える類似の手法としてFASTダイヤグラム(Function Analysis Systems Technique)があります。機能系統図とFASTダイヤグラムの関係性を鑑みると、この機能系統図の2次機能を縦の流れで見た時に、「工具を回転する」→「工具を移動する」→「ワークを移動する」→(切削する)→「切削部を冷やす」と機能の繋がり(プロセス)で分解することがFASTダイヤグラムに該当します。

■機能系統図から機能ブロック図への繋がり

ここで機能系統図から機能ブロック図への繋がりについて示します。上述の通り、そもそもの機能をゼロベースで検討する際には機能系統図を用います。その機能を各機能部品に落とし込み、インターフェースを可視化したものが機能ブロック図です。図2に機能系統図から機能ブロック図へ落とし込む為の活用方法を示します。機能系統図で分解された3次機能に対して、方式・構造へ落とし込むことにより、3次機能を実現する手段を検討します。その方式・機能をどのような関係性になるのかを示すものが機能ブロック図となります。

図2:機能から方式・構造へ/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2:機能から方式・構造へ



■機能ブロック図

機能ブロック図の定義は、製品システムがどのような機能の流れになっているのかを明らかにすることを目的として、エネルギ・物質・信号を変換する機能を箱で示し、機能間のエネルギ・物質・信号の流れを矢印で示した図です。 目的は、その製品をどのような構成で成立させるのかを考える為のものです。機能系統図と図面の間の位置づけすることができ、機能の働きを一般化した方式で記述できます。 図3に機能ブロック図の工作機械の例を示します。作成方法については、コラム『機能ブロック図の作成方法』を参照下さい。


図3:機能ブロック図の例|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図3:機能ブロック図の例



■機能○○図と技術伝承

このように、そもそもどのような機能があるのかを機能系統図で検討し、それをどのような方式・構造で実現するのかを落とし込み、その方式・構造を製品全体としてどのようなインターフェースをもって実現するのかを機能ブロック図にて検討します。 フルモデルチェンジの設計か、マイナーチェンジの設計かによって用いる検討ツールは異なりますが、単なる流用設計に陥らない為にも、そもそもの機能を検討することは重要です。また、ベテラン設計者はこのような考え方を当然のように行っていた、または頭の中で行っていたと想定されますが、その結果のみを引き継いできた現代の設計者は、このような考え方を知らないケースが多く見受けられます。ベテラン設計者退職の前に、機能系統図や機能ブロック図を用いた技術伝承も必要になると想定されます。

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