モジュラーデザイン実行手順簡易版_第三回:製品モデル確立(全六回)
2022/12/28
本コラムの位置づけ
モジュラーデザインは非常に有用であり興味あるものの、実行手順が複雑で分かり難くそのため着手に踏み切れないという声を多く聞きます。そのため本コラムではモジュラーデザイン実行手順を簡易版として6回に分けてお伝えします。ポイントのみ分かりやすく可能な限り平易な言葉で表現しますが、あくまでもイメージの把握のためとなるので本コラムで紹介する簡易版だけでは実際の実行には情報不十分だとご理解下さい。まずはモジュラーデザインの全体感のイメージを把握していただき、より深く理解するきっかけとなることを目的としています。本コラムがモジュラーデザインの広い普及に貢献できれば幸いです。コラム構成(全六回配信予定)
- 第一回:第一章「モジュラーデザイン実行手順全体像」
- 第二回:第二章「製品モデル確立」
- 第三回:第三章「目標設定」
- 第四回:第四章「製品ミックス確立」
- 第五回:第五章「MDベースの設計・製造連携VE」
- 第六回:第六章「設計のモジュール化」
第三章「目標設定」
モジュラーデザイン実行手順の活動全体像を図1に示します。 目標設定の意味
今回の説明範囲である「目標設定」は活動項目の2番目にあたります。その主な目的は以下2点となります。
- 主力製品または技術的波及効果の大きい製品を選び、それをひな形とすることで円滑にモジュラーデザインを導入する
- 根拠なき目標設定とならないよう、競合他社製品の部品共通化のレベルを把握する
次の開発計画にある新製品または新型製品を対象にするのが望ましいです。対象製品の全システム(方式)を含めることが基本となります。但し、困難な場合は主力方式または波及効果の大きい方式を選定します。
競合他社製品の調査には複数製品を購入し“群”で部品共通化率をベンチマーキングすることが望ましいです。仕様が異なる複数機種の競合製品を入手し、全機種累計での総部品点数、部品共用している機種数、総部品種類数を測定。部品共有化率とMD指数を自社製品と比較します。それをMD式ベンチマーキングといいます。
「MD式ベンチマーキング」の実行と、ベンチマーク結果を基にした目標設定の主なステップとポイントは以下となります。
MD式ベンチマーキング- 1. MD式ベンチマークを基に、目標とする総部品点数、総部品種類数を設定する
- 2. 各部品の特性により、部品少数化のアプローチを検討する
- 3. 部品少数化のアプローチは、部品少数化接近法の表を参照
Point
詳細な計算方法は「実践モジュラーデザイン」参照のこと
ベンチマーク結果を基にした目標設定
- 1. 表の左辺に部品構成に対し競合他社製品の末端部品まで記載し部品番号を付与
- 2. 部品種類ごとに部品点数と部品種類数を記載(部品種類数とは対象機種での仕様有無)
- 3. 部品共有化率とMD指数を計算し記載
Point
虫食い的な部品の種類削減ではない。虫食い的にやると対象部品は少数化できるが他部品が変動。トータルでの部品少数化のために、すべての部品を網羅した設計部品構成を基にする。
実行計画全体像
モジュラーデザイン対象部品の優先度をもとに実行計画を策定します。MD式ベンチマークで定めた目標を基に、対象設計部品全体から優先度付けして策定します。優先度は、基本機能部品の優先度が高く、補助機能部品の優先度が低くなります。この際、DSM:Design structure matrixを使って検討します。目標設定は着眼大局、実行計画は着手小局が重要です。
優先度検討
優先度を定める主なステップとポイントは以下となります。
- 1. 対象とする製品を構成する主な設計部品を抽出
- 2. 抽出した設計部品を、左辺と上辺で同じ順番に並べる
- 3. 上辺の部品が左辺の部品に機能的に影響を与える交点に「×」を記入する(DSM:Design structure matrix)
- 4. 対角線から下に「×」がいくように行列を並べ替える
- 5. 並び変えた結果、1行目から下行に向かって優先度が高い部品となる
- ・ DSMの手法を用いる(DSMの詳細は割愛)
- ・ エンジン、電動モータなど自己完結的なエネルギー発生源の優先度が高く、それらエネルギーを変換する装置が次の優先、伝達機能や支援機能は最後の優先となる
実行計画策定
実行計画を策定する主なステップとポイントは以下となります。
- 1. 優先度を基に、実施時期や担当者を定め計画化する
- 2. 部品ごとの目標と計画を目標管理指標としてまとめ管理する
- 3. プロジェクト活動企画書として、「背景」「目的」「範囲」「期間」「期待効果」を整理することで、「チームスピリット」を醸成する
- ・プロジェクトメンバーの意思統一が重要。そのため活動企画書を作成する
今回は第三章として、モジュラーデザインを進めるための目標設定について紹介しました。
次回以降でいよいよモジュール化活動の中身についての詳細を紹介したいと思います。
■モジュラーデザイン研究会メールマガジン
モジュラーデザイン研究会メールマガジンではコラム・セミナー情報などをご紹介して参ります。
また、ご登録いただくと講義・講演資料・お役立ち資料のダウンロードをご利用いただけます。