モジュラーデザイン実行手順簡易版_第四回:製品ミックス確立(全六回)

2023/6/30

 

本コラムの位置づけ

モジュラーデザインは非常に有用であり興味あるものの、実行手順が複雑で分かり難くそのため着手に踏み切れないという声を多く聞きます。そのため本コラムではモジュラーデザイン実行手順を簡易版として6回に分けてお伝えします。ポイントのみ分かりやすく可能な限り平易な言葉で表現しますが、あくまでもイメージの把握のためとなるので本コラムで紹介する簡易版だけでは実際の実行には情報不十分だとご理解下さい。まずはモジュラーデザインの全体感のイメージを把握していただき、より深く理解するきっかけとなることを目的としています。本コラムがモジュラーデザインの広い普及に貢献できれば幸いです。

コラム構成(全六回配信予定)

  1. 第一回:第一章「モジュラーデザイン実行手順全体像」
  2. 第二回:第二章「製品モデル確立」
  3. 第三回:第三章「目標設定」
  4. 第四回:第四章「製品ミックス確立」
  5. 第五回:第五章「MDベースの設計・製造連携VE」
  6. 第六回:第六章「設計のモジュール化」


 

第四章「製品ミックス確立」

モジュラーデザイン実行手順の活動全体像を図1に示します。

図1:モジュラーデザイン実行手順の活動全体像|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1:モジュラーデザイン実行手順の活動全体像


製品ミックス確立の概要
今回の説明範囲である「製品ミックス確立」は活動項目の3番目にあたります。その主な活動内容は以下3点となります。

  • 製品革新
  • 製品ラインアップ
  • 製品レイアウト・プラットフォーム


製品革新は、定義したモジュールがすぐに陳腐化しないよう5年先10年先まで見越して、新たな技術開発のロードマップや市場・競合分析を行ったうえで実施すべきものであり、商品戦略・商品企画が重要となります。ただし、本モジュラーデザイン実行手順の説明としては詳細な製品革新の手段は割愛します。 以降、製品ラインアップと製品レイアウト・プラットフォームの実行方法についてそれぞれ紹介します。

製品ラインアップ

「製品ラインアップ」の目的と主なステップとポイントは以下となります。

目的
  • 競合他社のベンチマーキングや自社SWOT分析により、製品開発の進むべき方向と進んではならない方向を定める
  • 製品・市場分析により、今後攻めるべき市場とその製品を決定する
  • 製品を近すぎず離れすぎない(重複もなく乖離もない)バリエーションと価格帯で、数年先のラインアップを決める

モジュール化した部品・システムがすぐに陳腐かしないよう製品革新を行います。そのため競合他社のベンチマーキングと自社SWOT分析、製品市場分析を実施し将来の製品ラインアップ検討のインプット情報とします。製品の主要な仕様で分類したラインアップ表を作成し、バリエーションと価格が近すぎず離れすぎないよう整理します。バリエーションの基となる仕様値は基本的には等比数列で整理します。

ベンチマーキング・分析
  1. 1. 競合他社のビジネスプロセスベンチマーキングと製品・市場分析を実施する
  2. 2. 自社のSWOT分析を実施する

Point
・製品革新はVEやTRIZ等手法を用いるが本手順書では詳細割愛する
・ベンチマーキングと各分析の詳細は専門書籍等を参照のこと

製品ラインアップ定義
  1. 1. モジュール化対象製品の主要な仕様にて分類したラインアップ表を作成する
  2. 2. 仕様値にはモジュール数(等比数列)を適用し、バリエーションが近すぎず離れすぎないよう設定する
  3. 3. 現行製品群が存在する場合は仕様値を作成したラインアップ表に表示する
  4. 4. 今後新規に進出するべき製品領域と今後廃止すべき製品を明らかにし、中長期的な計画を立てる

Point
・ 製品ラインアップの分類に用いる製品仕様には等比数列を使用する

図2:製品ラインアップ計画|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2:製品ラインアップ計画


製品レイアウト・プラットフォーム
「製品レイアウト・プラットフォーム」の目的と主なステップとポイントは以下となります。

目的

  • 作成した製品ラインアップを実現するため、ラインアップを実現する土台となる製品レイアウトを標準化する
  • レイアウトを標準化することで、個別レイアウトによって生まれる固有部品の発生を抑制する

作成した製品ラインアップに基づき、ラインアップを実現する土台となる製品レイアウトを標準化します。製品レイアウト標準化には、まず製品を構成する最上位であるプラットフォーム(製品の基本機能ユニット一式を搭載した架台)を標準化します。プラットフォーム標準化の具体的な手順は下段の作成ステップを参照してください。

プラットフォーム数の決定

  1. 1. 製品システム構成と製品仕様値の幅を記入した、製品仕様のマトリックスを作成する
  2. 2. 製品システム構成をまたいで共通にするプラットフォームのタイプとレイアウト図を定義する
Point ・この時点ではまずは共通にできるかどうか大枠で検討する

プラットフォームごとにレイアウトを標準化

  1. 1. プラットフォーム種類ごとに、プラットフォームに搭載する基本機能ユニットのレイアウト案を、商品の目的性能、結果性能、組み付け性能、総コスト、質量などの視点から作成する

製造工場の工程レイアウトの設計

  1. 1. プラットフォーム標準に合わせて工程レイアウトを設計する

プラットフォームに搭載する基本機能ユニットをモジュール化
実行計画を策定する主なステップとポイントは以下となります。

  1. 1. 次章の「設計のモジュール化」参照
Point
・標準化したプラットフォームを全く変えずに製品適用はできない、基本機能ユニットのどこかを変えながら適用することになるため、モジュール化が必要となる

プラットフォーム構成ユニットの流用化検討

  1. 1. 既存製品の新モデルで、標準化したプラットフォームの流用可能性を把握する

図3:プラットフォーム数の決定法と製品ミックス戦略の策定法DSMによる優先度付け|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図3:プラットフォーム数の決定法と製品ミックス戦略の策定法DSMによる優先度付け


今回は第四章として、モジュラーデザインを進めるための製品ミックス確立について紹介しました。
次回はMDべースの設計・製造連携VEについて紹介したいと思います。



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