機能ブロック図と品質工学(パラメータ設計)
2023/3/31
以前のコラムでも何度か取り上げてきました機能ブロック図に関して、今回は品質工学、特にパラメータ設計との関係について解説します。
■機能ブロック図の現状
機能ブロック図の定義は、製品システムがどのような機能の流れになっているのかを明らかにすることを目的として、エネルギー・物質・信号を変換する機能を箱で示し、機能間のエネルギー・物質・信号の流れを矢印で示した図です。 昨今の製品では複雑化に伴いシステム設計、MBSE等にも注目が集まっています。System of Systemsと言われるように複数システムから成り立つ製品(自動車やIoT機器などシステム間連携の多い製品)となっている現状では、機能ブロック図を作成し、システムの機能間の関係を明示することが製品設計には欠かせないものとなっています。 また機能ブロック図に記載されているユニット/部品を機能の記載方法“○○を○○する”に変換することで、機能系統図との関係が明らかになります。詳細は、コラム『機能系統図と機能ブロック図』を参照下さい。
■品質工学(パラメータ設計)との関係
機能ブロック図では、各ブロックにて機能が示されます。その機能を設計する際にロバスト性を含め品質を高めることが求められ、品質工学によるパラメータ設計が必要となります。ロバスト性とは、製品が予想外の状況下でも正常に機能する能力のことであり、製品の品質を左右する大切な要素です。 また、品質工学(タグチメソッド)は1950年代~2000年代頃に確立しましたが、近年の品質問題の影響もあり再度注目されています。本コラムでは設計段階を取り扱う為、品質工学の中でもパラメータ設計を中心に関係性を記載します。 パラメータ設計とは、製品の各機能を数式化することで、設計の精度を高めることができる手法です。具体的には、機能のIPO(Input-Process-Output)を表すパラメータを設定し、それを図示化したパラメータダイアグラム(IPONC図)を作成することで、製品の機能を定量的に評価することができます。なお、NはNoiseで外乱を示し、CはControlで制御因子を示します。図1では工作機械の機能ブロック図の例を示しましたが、この中からサーボモーターを例に図2にパラメータダイアグラム(IPONC図)を示します。このように図示をした上で要求に求められる機能を実現できるように機能設計を行います。
このパラメータ設計の活用タイミングは大きく2通りあります。1つ目は機能設計・基本設計レベル(1Dレベル)で、部品やユニット含めた構造、部品に落とし込む前のタイミング。2つ目は詳細設計レベル(3Dレベル)で、詳細設計部品やユニットなどに落とし込んだタイミングです。実施するタイミングにより各パラメータの粒度、数が異なります。
■モジュラーデザインとの関係
モジュラーデザインにおける活用のタイミングも2通りあります。
1つ目は、製品革新を行う際に機能設計レベルとして活用することです。そもそもの機能に遡り設計を行う際に活用し、その結果がコアモジュールとなり設計部品構成に落とし込まれることです。具体例としては、全製品ラインアップをカバーできるサーボモーターを設計するイメージです。
2つ目は、設計手順書に落とし込む際に詳細設計レベルとして活用することです。設計において理論的に数式を記述することができない場合があります。そのような場合には、パラメータ設計から取り組むことによりロバスト性を向上させた機能設計を行い、その過程で得られた数式や設計方法を設計手順へ落とし込みます。具体例としては、サーボモーターを複数種類準備した上で、設計対象製品の要求に最適なサーボモーターを選択できる設計手順書を構築するイメージです。
機能設計段階であれば製品革新・技術革新を行う
設計手順書の記載方法については、コラム「自転車における「設計手順書」簡易事例」やモジュラーデザイン教本を参考下さい。
以上のように、機能ブロック図と品質工学(パラメータ設計)は、製品設計において密接に関連しています。機能ブロック図を使った製品設計に品質工学を取り入れることで、より高品質な製品を設計することが可能となります。
参考文献
■モジュラーデザイン研究会メールマガジン
モジュラーデザイン研究会メールマガジンではコラム・セミナー情報などをご紹介して参ります。
また、ご登録いただくと講義・講演資料・お役立ち資料のダウンロードをご利用いただけます。