MD推進上の課題と対応の方向性(JMN討議より)

2025/10/31

 

■モジュール化を再考する:事例共有から見える多品種少量・個別対応の課題

MD研究会では、モジュール化の実践と課題を共有する場として、定期的にJMN(事例共有会)や講演会を開催しています。これらの場では、単なる成功事例の紹介ではなく、現場で直面するリアルな悩みや論点を持ち寄り、議論を通じて知見を深めることを目的としています。 アンケートでも「他社の具体的な事例を知りたい」という声が多く寄せられており、現場での関心の高さがうかがえます。
11月6日の講演会では、2社の企業より実際の取り組みを発表いただく予定です。各社で扱う製品や規模は異なっても、抱えている課題には多くの共通点があります。
今回は、9月に開催したJMN(Japan Manufacturing Network:製造業ネットワーク)の中でも特に議論が深まった二つの論点を取り上げます。

■論点1:生産台数が少ない中でのモジュール化

最初の論点は、「生産台数が少ない製品群において、モジュール化はどこまで有効なのか」というものです。 ある企業では、ある製品シリーズの生産台数が多くて年間100台前後、その中でも仕様差異があるため部品共通化できた場合でも数十台になるという規模です。このような場合、部品共通化や製造コスト低減の効果は一見すると限定的に見えます。 しかし、モジュール化の本質は単なるコスト低減効果だけではありません。共通設計の考え方を通じて、設計工数の低減や、設計変更時の影響範囲の明確化、リスク回避につなげることができます。 具体的には、対応①:可能性分析による効果試算対応②:設計工数低減(リードタイム短縮)を目的とした設計手順の標準化 が有効です。

対応①では、PQ分析や製品仕様の類似性分析に基づき定量的、簡易的に効果を試算します。
詳しくはコラム「モジュラーデザインを始める前にやっておくべき3つのこと」を参照下さい。

対応②では、目的を部品共通化によるコスト低減から設計工数低減に切り替えるという視点です。昨今では、設計者不足、工数ひっ迫が良く聞かれます。1部品・1図面のアウトプットまでの工数を低減するために、設計プロセス・手順を標準化します。詳しくは以下のコラムを参照下さい。
図:可能性分析|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図:可能性分析


■論点2:個別受注生産(ETO)におけるモジュール化

二つ目の論点は、「個別受注生産(ETO:Engineer to Order)でモジュール化は成立するのか」というテーマです。 しばしば「モジュール化は標準化であり、ETOは顧客ごとの個別対応である」という対立構造で語られます。確かに表面的には両立が難しく見えますが、実際にはこの二つは矛盾しません。むしろ、個別対応を成立させるためにこそモジュール化が必要なのです。 鍵となるのは、固定部と変動部の分離、そしてその背後にある「市場要求仕様―製品仕様―部品仕様」の関係性を体系的に整理することです。そのためには、以下の三つの観点から取り組みを進めることが重要です。

  1. ① 市場要求の体系化:顧客からの要求を過去製品横断的に構造化し、繰り返し現れる要求パターンを明確化する。またその市場要求と製品仕様の関係を体系化する。
  2. ②製品システム構成・設計部品構成の体系化:技術的な製品仕様表現に置き換え製品仕様との関係を体系化する。また、機能に基づく部品構成との関係を体系化する。/
  3. ③ 設計のモジュール化:設計のプロセス、手順を標準化するとともに、設計者暗黙知の形式知化を並行して行い、設計手順書を整備する。この整備する中で、モジュール化を行う。
詳しくは以下のコラムを参照下さい。 これにより、顧客要求対応の自由度を保ちながら設計標準化・効率化を図ることが可能です。この結果として、CTO型(コンフィギュレーション型)製造業への変革が図れます。

図:製品モデル|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図:製品モデル

■講演会の事例紹介

11月6日の講演会では、2社の企業より以下のテーマでご講演いただきます。

・「技術部だけ」では失敗する。売上を守り、コストを劇的に下げる「全社一丸」のモジュラーマネジメント導入法
・部品点数の大幅削減を目指した設計因子の分析

多品種少量生産や個別受注生産型の企業にとって、モジュラーデザイン実践的な導入目的や手法は各社各様です。本コラムや講演会での事例紹介が、自社のモジュール化を再考・加速するきっかけとなり、知識集約的なものづくり体制の構築へとつながれば幸いです。

【講演パンフレット】
モジュラーデザイン研究会 第11回定期講演会|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

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